2つの『寿命』
日本人の平均寿命は年々延び続け、現在では80歳を超えるようになりました。しかし、健康な状態で80歳を迎えられる人が多いかというと、非常に疑問を感じるところがあります。
何歳まで生きられるかを示す言葉を「平均寿命」というのに対して、何歳まで“健康”で生きられるかを示す言葉を「健康寿命」といいます。この本のタイトルにありますように、「健康でしかも長生きできる」ことは、すべての人の願いであると私は考えています。
「私はそんなに長生きしたくないよ」と言う人がいるかもしれませんが、この言葉の裏には「からだが弱ってまで」「人に迷惑をかけてまで」ということが念頭にあるのではないでしょうか。つまり、健康を維持できるなら「長生きしたい」と思うことに例外はないと思います。
そう考えると、健康で長生きすることはすべての人の願いであるということがいえるわけです。だから、健康寿命に貢献することは、すべての人に貢献できることでもあると私は考えています。このことに気づいた時から、「リハビリの仕事に携わる一人として、健康寿命にどんな貢献ができるのか」という私の追求が始まったように思います。
理学療法士(リハビリ医療に関わる国家資格)として、私はこれまで25年以上にわたり、老若男女を問わずたくさんの患者さんを診させて頂きました。その経験の中で言えることは、人間は60歳までのからだの機能は、普通に生活しているだけでも概ね維持することが可能です。
しかし60歳以降になると、人によってからだの機能に大きな差が生じてくると感じています。例えば、いくつになってもテニスができるほど活発に動いている人、活動性が低くなって歩くのもおっくうになっていく人、寝たきりになっていく人など、人によってからだの機能は大きな差を生じるようになるのです。
この原因として、 60歳を超えると人間は急速にからだが硬くなったり、変形してきたり、筋力が弱くなったりすることと関連していると思われます。このためこの実態を把握し、からだが衰えてくる要素を取り除く方法を知っていることは、健康寿命に大きく寄与できると私は考えています。
このサイトでは、そのことについてしっかりと説明して、皆様が必要な運動を実践することで、より健康な状態に改善したり、また維持したりすることに貢献できると私は考えています。