【柔軟性コラム③】背中が曲がるのを予防するには?

老いは姿勢から始まる


「体幹」とは、何となく胴体の部分を示すことは誰でも分かりますが、どの部分を指すのかご存知でしょうか。

具体的には、頭部と左右の手足(四肢)を除いた部分をいい、からだの中心にあることから、近年では「コア」と呼ばれることも多いです。コンビニの雑誌コーナーを覗いてみると「体幹」や「コア」のエクササイズに関する雑誌を多く目にするようになりました。それだけ老若男女問わず、体幹がからだの機能に重要な部位だと分かってきたということがいえます。

体幹は、主に骨と筋肉から構成されます。骨には骨盤・背骨・肋骨・肩甲骨があり、その周囲を取り巻く体幹筋と呼ばれる筋肉があります。

上の図を見てください。この二人の顔のシルエットは、同じものです。
しかし、明らかに右の人が若者で、左の人はお年寄りだと判断することができます。これは何よって判断しているのでしょうか。実は、我々が全身を見る場合、姿勢を見て概ねの年齢層を判断しているのです。つまり体幹が丸まっているシルエットを見ると、お年寄りと脳が勝手に判断するのです。そのイメージがあるからこそ、「お年寄りのまねをしてみてください」というと大半の人は体幹を丸めた姿勢を取ります。


老いは姿勢から始まると言っても過言ではありません。もう一度、お年寄りの姿勢のように、体幹を丸めてみてください。自然とひざも、股関節も曲がります。ひざのお皿も外に向いて、格好悪い姿勢になるのがお分かりいただけると思います。そしてこの姿勢で歩いてみると、前に進みにくいのが分かります。

つまり、この丸まった姿勢になると、そうでないときと比べ、からだを動かすのがおっくうになってくるのです。また、後述しますが、このような姿勢になるとバランス能力も著しく悪くなります。このため、体幹が曲がるということは体幹への影響にとどまらず、多くの部位の変形やからだの使い方に影響します。

タイプを知ろう!体幹が曲がるのは、腰椎主体?胸椎主体?


ここで体幹を構成する骨である脊柱の説明をします。上の図のように脊柱には頸椎、胸椎、腰椎があります。正常では、頸椎と腰椎は前に凸の形状をしており、胸椎は後ろに凸の形状をしています。

体幹が曲がってくると一言で言っても、実はいろんなタイプがあります。そして大まかに分けると、「腰椎を主体として曲がってくるタイプ」と、「胸椎を主体に曲がってくるタイプ」とに分けることができます。

このため、体幹が曲がってきたからといっても、ただ単純に伸ばせば良いというわけではありません。ちゃんと狙いを決めて伸ばすことで、効果的に体幹の曲がりを改善したり、予防したりすることができます。

この上の図のAさんとBさんをご覧ください。この二人は腰椎を主体として曲がってくるタイプです。このタイプの場合、腰椎がこんなにも丸まっているのに、胸椎はほとんど丸まりがありません。この人に、ただ体幹を伸ばすエクササイズをしても、胸椎がさらに伸ばされるだけです。これでは、この人にとっての狙いとなる腰椎を伸ばすことはできません。

またこの上の図のCさんとDさんのように、胸椎を主体して曲がってくるタイプの人に、ただ体幹を伸ばすエクササイズをしても、すでに反ってしまっている腰椎がさらに伸ばされるだけです。

こうしたことから、それぞれのタイプに合ったエクササイズを知ることによって、腰椎主体に曲がってくる人は腰椎を中心に、胸椎主体に曲がってくる人は胸椎を中心に伸ばすことができるようになるのです。

自分で体幹のタイプを知る方法


自分の体幹のタイプを知るための方法として、上半身だけ裸になって(女性は下着で)、側面からスマートフォンなどで写真を撮ってみると良く分かります。
正常では上の図の一番右の写真のモデルのように、骨盤と背中の後ろを結んだ線は、ほぼ垂直になり、胸椎がわずかに後凸、腰椎がわずかに前凸になっています。

しかし、さきほどの上の図のAさんとBさんのように、背中に対して骨盤がかなり後にある、もしくは腰の前凸のカーブが失われている人は「腰椎を主体として曲がってくるタイプ」です。

また、この上の図のCさんとDさんのように、背中に対して骨盤がかなり前にある、もしくは胸椎の後ろ凸のカーブがかなり強い人は「胸椎を主体として曲がってくるタイプ」です。

壁を利用したセルフチェック方法

また、壁を利用したもう一つのチェック方法も下の図に示しておきますので、この方法も是非試してみて、自分の体幹のタイプを知ってください。

上の図のように、壁の前に壁と踵が5cmくらい空けた状態で立ち、そこから少しずつ下がります。
はじめに『肩甲骨』から壁に触れる人▶『胸椎主体に曲がってくるタイプ』
はじめに『お尻』から壁に触れる人▶『腰椎主体に曲がってくるタイプ』

タイプ別の体幹の柔軟性を維持するためのエクササイズ!

園部 俊晴

園部 俊晴そのべ としはる

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理学療法士。コンディション・ラボ(インソールとからだコンディショニング専門院)所長。足・膝・股関節など、整形外科領域の下肢障害を専門としている。故、入谷誠の一番弟子。一般からスポーツ選手まで幅広く支持され、、多くの一流アスリートや著名人などの療術も多く手掛ける。身体の運動連鎖や歩行に関する研究および文献多数。著書多数。新聞、雑誌、テレビなどのメディアにも多く取り上げられる。また、運動連鎖を応用した概念は、専門家からの評価も高く全国各地で講演活動を行う。

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